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翌朝高田はいつも通りに出社した。 彼の職場は品川駅に隣接した複合ビルである。最下層は食堂街やスーパー、郵便局や簡単なクリニックまである商業施設だが、上層階は高田の勤務先以外にも名の知れた大企業の事業部が複数入居しており、それぞれのフロアに出入りするにはIDカードが要る。事業部がこのビルに移転してきてまだ2年しかたっていない職場は本社ビルよりも清潔だ。自宅アパートから徒歩で通える至近さもあって、高田はこの施設を気に入っていた、外観は。 IDを通してまっすぐ机に座りパソコンの電源を立ち上げると、勤務管理サイトもニュースサイトも開かずに検索サイトを開き、「精液 血」と入力する。 http://cgi.search.biglobe.ne.jp/cgi-bin/search-tb30o?q=%C0%BA%B1%D5%20%B7%EC 望む情報はすぐに見つかった。血精液症。アレルギーかなにかによる炎症らしい。 次は病院の検索だ。民間の病院検索サイトで品川区の泌尿器科をリストアップ。29件ヒット。自宅に一番近い医院を一つプリントして、いったんフロアを出た。この間15分、職場の人間と一言も言葉を交わしていなかった。業務以外であまり自分のことを明かすのはやめておいた方がいいだろう。 その晩も精液は赤いままだった。誰にあたれるわけもなく不愉快なまま眠りについた。 真っ暗な中に男が一人体育座りをして高田を見ていた。真っ白な浴衣のすそを太腿までたくしあげている。顔はひょっとこの面だ。男が口を開いた。 「打ち止めですよ〜」 どこか無頓着な感じのする声だ。高田は聞き返す。 「俺の事か?」 「ほかに誰かいる?」 「あんた誰?」 「だからあ、打ち止め。出たでしょ、赤玉?」 「赤玉?」 「そ、あれ出るともうおしまいだよ」 「あの血のこと?」 「まあ、どうでもいいじゃん。どうせ使わないんだろ?言ってたじゃん」 「どこで?」 「だめだよ、都合のいい所で都合のいい事ばかり言ってちゃ。人の言うことだけじゃなくて、自分の言ったことも覚えてないんだねえ、あきれた、んじゃねえ」 目が覚めた。全身汗でびっしょりだった。精液は・・・とても試す気にはなれなかった。(続く) |
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